能力要素の抽出
あるべき人材が保有し、あるいは獲得すべき能力の定義を行うにはどうすればよいのでしょうか?
先述のケースでいうと、まずは具体的なイメージが湧きやすいように言語化した人材像を、能力や資質ベースに置き換えてみるということです。
主体性、誠実さ、傾聴力、情況把握力、探求力、問題発見力、概念化力、統合力、創造力、計画力、チャレンジ力、包摂力、共感力、思いやり・・・といったように、思いつく言葉としてまず明記していきます。
そうすると言葉は違っていても能力的には同じ意味だとか、似たような言葉でも明らかに意味が違うという状況が発生します。このとき作業チームのメンバーの認識が統一できるように議論を繰り返すことが重要です。
能力要素の構造化
しかし、あまり分解しすぎると、果てしなく細かくなり収拾がつかなくなってくるのである段階で、大くくりにしていく必要があります。例えば、以下のように3つぐらいの抽象度の高い言葉を設定し(大概念)、より詳細な能力を表す言葉(小概念)を紐づけていくと構造化ができます。
●協働力:組織内で発揮される能力として、主体的にチームの連携性、連帯感を高め組織を活性化し、次世代人材を育成する。従業員は自身の成長により、協働に資するスキルを高め自走する人材となり、全体に対しての自分の役割を見出す。
⇒主体性、包摂力、共感力、思いやり、チャレンジ力、学習力、自走力
●共創力:外部のステークホルダーと連携し、既存の商品、サービスを磨き常に価値を高め共存共栄を実現する。
⇒傾聴力、情況把握力、探求力、課題発見力、連携力、創造力
●革新力:内外の経験を転用、応用し、様々な主体者を繋げ新しい価値を創出する。
⇒問題発見力、概念化力、発想力、統合力、創造力
いったんこのように概念を、大概念、小概念の大小2段階に分けて構造化すると、全体が整理され人材の評価項目にも落とし込むことが可能となります。
大概念を用いると短い言葉で、当社におけるあるべき人材を次のようにシンプルに表現することもできるようになります。「顧客やステークホルダーの声を聞きつつ、ともに価値を高める共創力、それを活かした革新力。その基盤となる組織を活性化させる協働力を発揮する人材」といったことになります。
ただ、能力要素はゆくゆく組織内への浸透を意識し、当初はできるだけ社内ですでに使われている固有の言葉を活用したほうが良いでしょう。対外的な目も意識すると、カッコ良い言葉でまとめたいところですが、人材育成に使われなければ意味がないので、使い古されている言葉のほうが、なじみがあってかえって現場に浸透していくことになります。 |