上記1~3レベルのいずれの場合でも必要なのが、例えば下記を押さえることです。
DXプロジェクトの目的の明確にし、言語化する
そもそも何のためにプロジェクトに取り組むのか、目的を言語化する必要があります。言語化することで、DX担当組織や担当者の意識が鮮明になり、モチベーション(あるいは、へこたれないない心)の源泉になります。
また、目的を言語化することで、代表者や役員陣、あるいは上席者とのコンセンサスを取りやすくなり、また他部門や外部の協力者からの協力も得られやすくなります。
さらに、目的が明確であることによって、プロジェクトシートやWBS、ガントチャートへの落とし込みが、的確に、効率的に、きれいにできます。
目標を定性的、定量的に明確にする
DXプロジェクトでは、達成期日とアウトプット及びその品質の達成水準も決める必要があります。そこで、今回のプロジェクトでは、何をいつまでにどの程度仕上げるのかを明確にします。目標はプロジェクトのゴールといっても良いでしょう。
例えば、もっとも簡単な目標例では、「〇年〇月までに、社内決裁における紙とハンコをゼロにし、現状平均〇日の決裁スピードを〇倍早める」といったものです。
ステークホルダー(利害関係者)を明らかにし、対策を講じておく
DX推進にあたっては、内外の関係者全員がもろ手を挙げて賛成ということはなかなかありません。最終的に企業が競争優位を獲得し、サステナブルな存在になれれば全員ハッピーになれますが、そこに行くまでに目先に不利益を被る関係者が存在するかもしれません。
そこで、ステークホルダー毎の調整ごとが必要となってきます。このとき、なるべく上席者に協力してもらえるよう説明しておく必要があります。上席者から代表者、役員説明等しておいてもらったほうがより確実です。そして、いよいよ導入するソリューションが決まり、予算を通す段になって財務担当役員から反対されるなどといったことがないようにする必要があります。
また、顧客や取引先等の賛同も得ませんと、DXを導入したらかえって不便になったと大きなクレームになり、先方の圧力に負けて元に戻ってしまうということも考えられます。
利害関係者が誰なのか、できるだけ上席者と議論して、本プロジェクトのステークホルダーを明確にして、どのような対策を打っておくべきか考えておくことは極めて重要です。
プロジェクトの緻密な設計~リソースの配分とマイルストーンの設定を行う
目的、目標を決めたら、プロジェクトシートやWBS、ガントチャート等の設計書に落とし、誰が何を担当していつまでに、マイルストーン毎に、どのレベルまで仕上げるかをできるだけ鮮明に記述していくことが重要です。なぜなら事前に具体的に成功イメージを持ち、リスクを予め想定しておくことになりますし、設計書の納得性で、プロジェクト参画者の協力度合いも変わってくるからです。
設計書に落としたうえで、参画メンバーは一人一人ケアし、意識を共有し、やることをコミットしてもらい、志高くスタートできることがあるべき姿です。
DXベンダーの選定
DXには、ITシステムの導入や刷新が必要であるため、自社開発する以外はベンダーの協力も必須となります。できるだけ早期の段階で、複数のベンダーから話を聞いて、知見を高めておく必要があります。
このとき、他社における導入事例や、成功、失敗のケースを聞くのはもちろんですが、DXに関係する部門の、自社の業務フローも把握しておく必要があります。なぜなら、他社の例が自社にそのまま当てはまることはなかなかないからです。自社の業務フローをベンダーに説明した上、これができるか、あれができるかベンダーからの意見をもらえる状態が好ましいと言えます。
導入コストはもちろん重要な選択肢ですが、自社の業務フローを熟知した上で、ベンダー各社が、それぞれ何が得意で、何が得意でないかをヒアリングしていかないと、自社に合わないシステムを導入してしまい、現場から使い勝手が悪いというクレームを受ける危険性があるからです。
ビジネスモデルを革新する際の事例研究
3レベルで、ビジネスモデルを変革する目的で取り組むのであれば、DXに取り組んでいる同業他社はさることながら、異業種の事例も研究する必要があります。むしろ異業種の取り組みが参考になります。また、ビジネスモデルの変革を支える、一気通貫的なERPプラットフォームとそのアプリケーションについても調べる必要があります。
知識のリソースとしては、ベンダーからの情報を始め、長期ビジョンを掲示し達成プロセスを説明している上場企業の決算説明資料なども非常に参考になります(イノベーションのテーマが必ず入っているため)。
そのうえで、代表者や経営陣とよく対話する機会を作り、ヒントをもらいましょう。なぜなら、経営陣だからこそ見えている成功イメージや、取り組みへの方策があるからです。
もし、時間的な余裕があるならば、イノベーションにかかる経営理論、経営史、科学技術史等に触れておくことも無駄ではありません。ITは手段であって、本質はイノベーションであるからです。 |